【社説】審議室の安易な増加は慎むべきだ

 法案の大量提出に伴い、審議室増加に関する議論が盛り上がりを見せている。

 ここで大事なのは、そもそもなぜ審議室の数が絞られているかという理由だ。法案の数と審議室の数を一致して設定することは容易い。しかし敢えてそうされていないのは、空想国会のゲーム性を高めるためである。

 空想国会における野党の「力の弱さ」は常々指摘されてきた。ただでさえ議院内閣制のもと、立法と行政が事実上一致しているのに、立法コストが著しく低い空想国会においてはほとんどの場合、時の政府の独壇場となってしまう。

 そのような事態を緩和し、野党に有利な条件を設定するために空国にはいくつかの制度がある。たとえば、予算委員会がそうである。実際、夕張「虚無」政権を作り出したのは、この予算委員会におけるたった数名野党の議員の活動であった。
 審議室数の制限もこれと同様の機能を果たしている。政府提出法案の審議を停止させ、なるべく遅延させるには審議室を埋めるだけの法案を用意すればいい(もちろん、その法案があまりにもお粗末なものであれば批判されるであろうが)。このように、審議室の制限は意味のあるものなのだ。

 また、現在衆院に提出されている規約改正案では、議長と「事務局長の協議の上」審議室を増やすとある。これこそもってのほかである。百歩譲って審議室増加を認めるとしても、議会内部で討議すべき話に議院外の存在である事務局長が出てくる余地はない。

 議員諸氏には、これらの歴史や意義を理解した上で議論・採決に臨むことを期待したい。

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